花屋・東信

花屋というべきだろうか、アーティストというべきだろうか。
東信(あずま まこと)は、花や植物を題材にして表現しているひとだ。
数年前に放映されたTBS「情熱大陸」でその存在を知った。
銀座で花屋を営んでいるが、その店に街の花屋のように花は陳列されていない。
ここは、ショーウィンドウに飾る花、影される花、贈り物としての花
を生けて作品を創るアトリエだ。
いつの日か花を贈るような機会があったら、是非お願いしてみたいな、
そんな記憶として頭に残っていた。
ふとしたことから、その記憶が蘇り、近況をネットで調べてみた。
「AMPG」というギャラリーを開いており、ちょうど彼の「式」というシリーズの
展示をしているということで、足のリハビリがてら足を運んでみた。


展示されているインスタレーションは一つ。
透明なアクリルでできた一辺が1メートルの直方体の箱が水で
満たされており、その中心に小さな松が浮かんでいる
というものだ。


入場の際に渡された紙片が渡され、「式」のコンセプトが印字されていた。

 植物は無限造形の中にある
 それらを表現するという事は
 それらを囲む全ての環境に規則をつくり
 はめ込んでゆく作業だと私は思う。


 その無限と規則の間で生まれた摩擦こそが
 自然状態における植物の存在に勝れる
 唯一の可能性ではないだろうか
 この式というシリーズはそれらを
 徹底的に追及する実験的シリーズである


 式は二つのキーワードから成り立っている
 一つ目は松(無限)二つ目は四角形(規則)
 松は植物の中で最も複雑な造形美と強い生命力を持ち合わせている
 すなわちここでは無限という存在である
 それを様々な素材の四角形という規則にはめ込んで摩擦を起こす作業である


 空気とともにある鉄枠
 氷を抱える冷凍庫
 水を抱えるアクリル


 式における植物の生命には
 無限と規則との摩擦と共に
 生きる環境との格闘がある


 その死にものぐるいの摩擦と格闘の軌跡こそ
 式という植物表現の可能性の萌芽である」


一度読んだだけでは直ぐに理解することができず、
自分なりの理解ができるまで何度も繰り返し読んだ。
何か夢中にさせるものがあった。
反芻が終わると、インスタレーションは見なくてもいいかな、そんな気持ちになった。
決して興味や期待が失せた訳ではなく、やはりそれは視覚的にインパクトのある魅力的なものだ。
紙片にあった明確なコンセプトから推測される
アーティストの考え方、物事の捉え方、追及しようとしたもの
そういったものが興味を満たしてしまった。
極端にいえば、視覚化、実体化されたものは必要なかった。
「その死にものぐるいの摩擦と格闘の軌跡」が作品であるとすれば、
その格闘しようとする姿勢の表明に接したことに満足したということかもしれない。



情熱大陸
http://www.mbs.jp/jounetsu/2005/12_18.shtml

<東信 - AZUMA MAKOTO>
http://www.stemandcookie.com/top.html

<JARDIN des FLEURS>
http://www.jardinsdesfleurs.com/

<花屋の日常>
http://blog.stella-web.jp/blog/azuma/