かつての朝日ソノラマのような感動

銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)

銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)

銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)

銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)

先日の入院の際に、差し入れでもらった「銀輪の覇者」を読了。
とても楽しめる作品だった。
かつての朝日ソノラマの作品のようなワクワク感を久しぶりに味わった。
昭和初期の日本を舞台に、本州を縦断する自転車レースの物語。
サイクルレースについての知識がなくても全く楽しめる。
映像化を強く希望。

中立進化説

ダーウィン自然選択説に修正を迫るような「wikipedia:中立進化説」を提唱した日本人の科学者が1960年代にいたことを知った。
適者生存ではなく、幸運な者が生き残る(サバイバル・オブ・ザ・ラッキスト)という表現が面白いし、
幸運な者が生き残るという考え方のほうが、適者生存という考えをやんわりと包含し、
より無理のない考え方のような印象を受ける。

分子レベルでの遺伝子の突然変異は、そのほとんどが自然選択に対し有利でも不利でもない中立なもので、それが集団中に広まるのは偶然によって決まる。すなわち、ハーバート・スペンサーの言う適者生存(サバイバル・オブ・ザ・フィッテスト)ではなく、幸運な者が生き残る(サバイバル・オブ・ザ・ラッキスト)、と考えるのである。この考えは、ダーウィン自然選択説に基づく進化の総合説に修正を迫る内容であったので、当初は大きな反発を受けたが、その後、様々な証拠が集まり中立進化説は次第に受け入れられていった。

生存に不利な変異は自然淘汰によって排除されるという点では淘汰説と共通するが、中立進化説では、突然変異の大部分が、生物にとって有利でも不利でもない中立的な変化であるという事実に注目する。

つまり、遺伝子に起きた中立的な突然変異が、自然淘汰ではなく、全くの偶然によって広がり、進化が起きると考える。